(C’est une version japonaise de l’article « Ma famille était contre ce mariage 1/2 ».)
「実はね…今だから言うけどね。」ある日母がそっと切り出しました。
「9年前、結婚を心から祝福してあげられなかったの。あんたが騙されて傷つくんじゃないかって心配だった。ごめんね。でも、今はもう安心して見ていられる。みんな幸せそうで何より。」
両親に心労をかけてまで強行突破したアルとの国際結婚。実に親不孝な娘だったなと反省しています。親も理由なく反対はしません。今から考えると、両親の心配は本質をついているなと思います。今回の記事では、そんな当時の両親の(特に母の)心配の種を、そして次回の記事で、親不孝娘の至らなかった点の反省をしていきたいと思います。
目次 (Table des matières)
結婚の挨拶
結婚の挨拶の日に現れたアルは、いつも通り。特に緊張を浮かべる様子もなく、いつも通りのジーパンにTシャツ姿。まるでこれからデートにいくかのよう。服装についての説明するの忘れてたっけと大反省。まあスーツを着てきてと言ったところで、スーツを持ってきていなかったみたいなので、仕方ない。第一印象はあんまり良くないかな。
こんな感じで、あまり緊張感のないまま和気あいあいと進みました。しかし、結婚の挨拶に来たのに、雑談多めで中々話を切り出さないアルに、母はやきもきしていたようです。私が席を立った時に、業を煮やしてアルに結婚の挨拶を促していたと、後から妹に聞きました。私が戻ってくると、アルは日本語とローマ字の混ざった紙を取り出して、日本語で両親に挨拶し、承諾をもらい、お開きとなりました。
母が少しピリついていたのには、これから書く理由があったからなのです。
異文化ゆえの心配の種
母は田舎で生まれ育ち、かなり保守的な考えの持ち主です。男性は女性を守るもの、娘の結婚相手には頼り甲斐のある人を、とどこかで思っているような古い考え方の人間です。そんな母に育てられた私もご多分に漏れず保守的なので、ちょっと先鋭的なアル家族とは考え方に少々の溝がありました。
私の結婚宣言を受けて、アナログな母も母なりに色々と調べていたようです。ただ出てくるのはどれも安心するには心許ない情報ばかり。高い離婚率、不貞に対する寛容さを見せる恋愛大国。不倫で叩かれる芸能人が当たり前な国で、貞操や忍耐を美徳と教えられてきた母にとって、フランスは決して安心して娘を嫁がせられる国ではありませんでした。
私たちが結婚することになった大きな理由が、ビザの問題でした。学生ビザの申請が通らなかった時、既に2年ちょっとの交際をしていた私の頭をよぎったのは結婚という二文字。ところがどっこい、アルはというと、別の可能性を一生懸命に探していました。結局、他の可能性は見つからず、アルも結婚を決意するのですが、この煮え切らない態度は、後に私の家族にも不信感を抱かせることになります。(私たちの周りのフランス人カップルの婚約ないし結婚までの交際期間は、少なくとも5年程。中には10年近い交際をしているカップルもいます。今なら思います。結婚適齢期だとしても、フランスで交際期間2年は短かったのかなと。)
母は、離婚後の私の生活を心配していました。アルが結婚に価値を見出せないのであれば、何かちょっとしたことで、すぐに別れるのではないか。そうしたら、日本での生活を全て捨てて異国に嫁いだ代償は小さくない。再就職先も再婚相手も、ある程度の年齢になればグッと難しくなる。そういったことを含めた覚悟をアルは本当に持っているのか。私が恋愛気分で有頂天になっていたことを知っていた母は、藁にもすがる思いで、アルにその覚悟を求めていたのだと思います。
婚前契約と法廷財産制
結婚に際して、アルは婚前契約を結びたいと言いました。複雑で時間もお金もかかるフランスでの離婚を、少しでも簡単にするためだそうです。離婚時に、子供の親権では絶対に揉めて時間がかかる。だから財産分与だけでも簡素化できれば、離婚全体にかかる時間を短くできる、というのアルの言い分です。当時の私は、内容をしっかりと理解する事なく、なんとなく離婚費用と期間を短縮できるならという理由で、夫婦別財産制の契約を結びました。(後述しますが、日本の法廷財産制は夫婦別財産制です。)
この話を耳にした母のアルへの不信感は、この時ピークに達していたようです。「そもそも結婚を躊躇っていた上に、いざ結婚となったら、今度は娘に不利な婚前契約を結びたいと言い出す始末。自国で仕事を探せるアルには選択肢もあるけれど、外国人の娘はそう簡単にはいかないはず。それを全く考慮しないなんて、本当に信用していいのか。」と自問自答していたようです。
調べてみると、日本とフランスでは法的な制度も少々違っていたので、ここで比較してみようと思います。
婚前契約
日本でも最近耳にするようになりましたが、この夫婦財産契約というのは日本ではほとんど普及しておらず、2016年にこの契約をした夫婦は全体の4,7%だったようです。婚姻生活の費用負担や財産について、民法の定め(法定財産制)と異なる取り決めを望む夫婦が契約を結びます。婚姻届を提出する前に登記をし、婚姻届を提出した後は、原則、契約内容を変更できないようです。
フランスの婚前契約は婚姻期間中の財産について規定するもので、4つの選択肢が法で定められています。婚前に結ぶのは日本と一緒ですが、結婚後も契約内容が変更できるのが、日本と違う点です。
法定財産制(夫婦間の財産関係を定める法律上の制度)
日本の法定財産制は夫婦別財産制となっています。これは、婚姻前や婚姻中に自分の名で得た財産は全て自分のもので、夫婦のいずれに属するか曖昧な財産は夫婦の共有というものです。原則では、夫の稼いだ給料は夫のものになりますが、それは、妻の家事や育児といった協力があって稼いだお金ということになり、夫婦で協力して得たものは共有財産になります。離婚の際の財産分与で、妻には半分を要求する権利があるというのが、日本の夫婦別財産制で、不平等が生じないように配慮されています。一方借金はというと、原則、夫婦の一方が作った借金は夫婦の他方は負わないと考えられています。しかし例外的に、日常生活を送るための借金は、夫婦の共有になるそうです。
フランスはというと、夫婦共有財産制です。これは、結婚後に作った財産や借金は夫婦共有のものという考え方です。例外的に、生前贈与や相続で得た財産は、例え婚姻中に受け取ったとしても個別の財産とみなされます。借金も夫婦の共有財産にされてしまうという大きなリスクがある為、夫婦一方が事業をやっている場合などに、婚前契約を結び、借金を夫婦の共有財産から外し個人の特別財産にする夫婦もいます。
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