フランスの深刻な医者不足

もう10年も住んでいると、具合が悪くてもすぐに診てもらえないフランスの医療制度にも慣れてきました。不満はありますが、もう諦めています。きっとそれも、私がまだ健康上の問題を抱えていないからだと思います。老後のこと考えると、頭の痛い問題です。

今回は、現状のフランスの医療制度を、私の経験とともにご紹介したいと思います。

(「🎥動画で🇫🇷日常会話」では、この内容を、フランス語で簡単にまとめてみました。)
① 医者不足、予約1週間後から
② 医者不足、予約が1年後の場合も
③ 産婦人科医、診察を抜け出しヘルプで病院へ
④ 夫、救急車で病院に運ばれるも放置される

予約は最短で約1週間後

これは私の肌感ですが、かかりつけ医などの予約は、大体早くて1週間後といった感じです。時間に融通がきく場合は、たまたま出たたキャンセル枠に入れてもらえることもありますが、当日に予約が取れることはほとんどありません。
その為、 « SOS Medecins »という制度があるのだと思います。

2人目出産後は満身創痍の記事で、 « SOS Médecins »について説明しています。

専門医の場合、数ヶ月待ちが当たり前

専門医とは、一般内科(かかりつけ医)以外の、皮膚科、耳鼻科、眼科、産婦人科、小児科などの医師のことをいいます。

私の場合は、皮膚科医の予約が中々取れず、何度電話しても、予約は最短3ヶ月後。緊急なら大学病院に行くようにと言われるだけでした。そして、その期間はかかりつけ医に薬を処方してもらいながら何とか耐え、ようやく皮膚科医に診てもらえる時にはもう良くなりかけで、原因がわからないということが何度もありました。結局、数年の間、肌のかゆみに苦しみましたが、原因は、ストレス以外にわかりませんでした。

また、すぐに診てもらえる皮膚科に行かかった時は、出された薬で肌が悪化してしまいました。そこで、その炎症ををおさえる為に、かかりつけ医に再び診てもらい(予約は1週間後)、新しい紹介状を書いてもらい、また別の皮膚科医を探したという経験もあります。

眼科医の場合ははもっとひどく、予約が半年後から1年後ということはよく聞きます。レーシックの手術が1年後という話も聞きました。

他にも、小児科の肺の専門医の先生も半年待ちでした。小児科の心臓の専門医は数週間待ちだったので、専門分野にもよるのかもしれません。

診てもらえるだけマシ

中々予約が取れなくて大変なフランスの医療制度ですが、困るのは、新規患者を受け付けていない場合です。こうなってしまったら、どう交渉しても受け入れてもらえません。自分でまた別のお医者さんを探すことになります。

私の場合は、皮膚科医2人、小児科の肺の専門医1人から断られました。小児科の肺の専門医は、小児科の先生から名指しで紹介状をもらったのですが、それを説明しても断られました。何とか、別のお医者さんを1人を紹介してもらえましたが、その先生も予約は半年後。まだ診てもらえるだけ良かったです。

ちなみに、私の産婦人科の先生も、もう新規の患者さんは受け付けていないようです。

すぐに診てもらえる時は要注意

ということで、最短でも1週間程度待つのが当たり前のフランスで、当日や翌日に予約が取れる先生は、要注意です。ヤブ医者の可能性があります。私は、歯医者と皮膚科医のヤブ医者にあたってしまいました。両者とも、すぐに予約が取れました。

ただ、ヤブ医者ではないのに、すぐに取れるお医者さんがいます。開業したてでまだ患者さんをたくさん抱えていない若い先生です。難しいのは、若くて腕の良い先生と、若くて腕の悪い先生の見分け方。こればかりは素人目にはわかりません。

ということで、年配なのに、すぐに予約の取れる先生は要注意です。この医者不足の中、医者人生は長めなのに、患者さんが付かないということは、何かがあるということです。ちなみに、私が当たったヤブ医者の歯医者は、まさにこのパターンでした。

歯が痛いならと、1週間後の予約にありつける

歯科医も、医者不足の例外にあたりません(詳しくは「主な原因」で)。

歯医者に予約の電話を入れると、2週間後と言われました。歯が痛いことを説明すると、「それなら、1週間後のこの時間に空きがあるわ。」と言われ、驚いたのを覚えています。

歯科医にかかるのには紹介状はいらないので、どうしても緊急の場合は、すぐに診てくれる歯科医を探す必要がありそうです。

夫、病院に運ばれるも放置され、夜中に家に帰される

夫のアルは、自転車で転んで骨折し、救急車で病院まで運ばれました。でもお医者さんも看護師さんも人手不足で、病床も足りず、廊下で待たされ、キャスター付きのベッドのまま、大きな部屋で数時間待たされていた(放置?)といいます。そこには20人から30人の患者さんがいて、アルと同じように、自転車での事故の人が他にも4人いたそうです。

その部屋で、他の多くの患者さんと共に、治療を待つこと数時間。看護師さんたちのシフトも変わり、運び込まれた時(午後)は明るかった空も、真っ暗になっていました。そこで、通りかかった看護師さんに事情を説明してみると、すぐにレントゲン医師に電話を入れてくれ、とんとん拍子にレントゲンを撮ってもらったようです。どうも、シフトが変わる時にうまく引き継ぎがなされず、アルは忘れられていた模様です。

レントゲン後に、アルはようやく個室の病室に運ばれました(手術準備の為)。そして、手術をするだろうと判断した救急医のもと、準備が始まりかけていた矢先に、外科主任の登場です。外科主任の判断は、手術の必要なしということで、帰宅の許可が出ました。この時、すでに午前零時。

救急車で自宅まで運んでくれることになったのですが、救急車が出払っていた為、そこから救急車待ちの2時間弱。そして、午前2時過ぎに、ようやく無事に自宅に辿り着きました。

簡単にまとめると、救急車で運ばれても、半日(以上)の拘束で、ひたすら待たされ、された処置はレントゲンだけ、という悲惨な状況です。

産婦人科医、診察中に病院から呼び出され、いなくなる

先日、産婦人科の定期検診に行った時のこと。待合室で、隣に座ったおばあちゃまに軽く挨拶をすると、びっくりするお話をしてくれました。

なんと、おばあちゃまが、前回このお医者さんにかかった時、診察中の先生のもとに、(先生が週1で働く)病院から応援要請がかかり、そのまま2時間ほど出て行ってしまったそうです。その間、待合室は、患者さんで一杯になっていたと言っていました。

病院の先生が足りないところに、緊急の出産が入ってしまい、開業医を呼び出すって、凄いことが起こっていますよね。私は、驚き過ぎて、目を見開いて話を聞いていましたが、おばあちゃまの温度感はそこまでではなかったのが印象的でした。「緊急で出産が入っちゃったなら、仕方ないじゃない。今日はそうならないといいわ。」と言っていました。
ちなみに、この話を興奮気味にお義母さんにもしましたが、このおばあちゃまと同じ温度感のリアクションで、私の方が驚きました。

補足説明です。フランスでは、専門医の開業医も週に1度は病院で働いています(医療現場での技術を維持する為)。でも、それは診療所での診察時間外のことです。
また、フランスでの開業医は、1人で回し受付の人を雇うだけの先生と、数人の先生で診療所をシェアする開業医がいます(若い先生ほど、このタイプが多い傾向にあります)。私の産婦人科の先生は、1人で診療所を回しているので、先生が呼び出されると、診察はストップせざるを得ません。

主な原因

ここまでのひどい医者不足は、1971年から医学部の入学者を制限していたことが原因のようです。現在はこの制限は廃止されているようですが、若手の医師が少なくなり、団塊世代の医師の退職で、医者不足は深刻化しているのが現状です。この医者不足は、歯科医にも例外なく当てはまります。というのも、フランスでは、歯科医も医学部に入学することが必須だからです。

また、私は女医さんに診てもらっているのですが(かかりつけ医、産婦人科医、皮膚科医、小児科医)診療時間が短めな気がします。
例えば、産婦人科と小児科の先生は、土日祝日と、病院の当直のある日の午後はお休みです。また、皮膚科の先生は、お子さんが小さいのか、出勤日がかなり時短で、代理の先生に診てもらうことの方が多いです。

まとめ

日本でも救急車のたらい回しが問題になっていますが、フランスではもっとひどいような気がします。救急外来も、一般診療もすぐには診てもらえないのが現状です。

中々お医者さんに診てもらえずに、ヤキモキすることもありますが、健康に過ごせることが当たり前ではない、ということを思い出すきっかけにもなっています。

とにかく今の私にできることは、病気にならないように気をつけて過ごすことです。健康寿命をできるだけ長く保ち、なるべくお医者さんにかからなくて済むようにしていきたいと思います。






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